【プロフィール】 京都在住。文部科学省プログラムで同志社大学へ留学。高台寺での巫女の仕事や大阪のジョージア料理レストラン、京都経済センターなどでキャリアを積む。その間に日本人男性と結婚し、娘モアナさんも授かる。
――日本語を学習するきっかけはなんでしたか?MEXT(文部科学省の留学プログラム)で同志社大学に留学をされましたが、留学試験はどうでしたか?
稲場マリアムさん:
4年間、トビリシ自由大学で日本語を主専攻として学習していました。卒業した後に、1年ほど中古車を扱う会社で仕事をしていました。日本から中古車を購入し、私が車の状態などを調べたりしていました。
そのあとに、MEXT研究生プログラムに挑戦しようと思いました。日本語と英語の試験、また面接などがありました。面接では緊張しましたが、自信をもって答えることができたと思います。無事合格し、3年間日本へ留学行くことが決まりました。当時は、留学先として希望する大学院には自分で書類を送る必要があったのですが、できるだけ多くの大学院に送っていたのを覚えています。その内、5つの大学院から返答があり、留学先となる同志社大学からも返事がありました。
実は東京へ留学に行きたいと思っていましたが、同志社大学に来ていなければ、今のこうすけ(旦那)にも出逢えていなかったので、最終的には同志社大学で留学ができてよかったと思っています。海外経験は日本が初めてでした。また、自分のパスポートに日本のビザをつけるのが私の夢の1つでもあったので、MEXTプログラムに合格したことで、夢も叶いました。
――MEXTで日本の大学に留学したいと考えるジョージアの学生に何かアドバイスはありますか?
稲場マリアムさん:
実は大学一年生の時に、MEXT学部生の5年間プログラムに応募したのですが、とても難しい試験でした。数学などの科目もあったのですが、得意ではありませんでした。また、3年生のときに、日研生という1年のプログラムにも応募しましたが、残念ながら不合格でした。2回MEXTプログラムに挑戦し合格にはならなかったのですが、どのような試験なのかを知り、また、書類の準備の仕方などを先に経験することが、後のMEXT研究生プログラムに合格することにも繋がったと思います。
アドバイスとしては、合格するまで何度も挑戦することが大切だと思います。何度も試験を受けることで、経験を得ることができ、また、緊張しなくなります。提出書類をしっかりと書くことも大切だと思います。今はどうかわからないですが、私の時は、書類は手書きでした。間違えるたびに書き直す必要がありました。書く内容をしっかりと考えて整理したものを丁寧に書くことは大切だと思います。
――同志社大学での留学生活はどうでしたか?
稲場マリアムさん:
3年間の留学生活の内、始めの1年は天国のようでした。1年目は日本語の授業を受けることになっていたのですが、他の留学生の友達と一緒に時間を過ごし、日本を体験することは私にとって非常に有意義でした。しかし、2年目からは地獄のように研究のためにひたすら勉強することになりました。
大学院で研究を始めるには、同志社大学内の試験を受ける必要がありました。研究テーマに関して日本語で答えていくという試験でした。その後すぐに面接でした。面接官らはピロスマニなどジョージアに関して知っていたようで、話は盛り上がりました。結果、同志社大学から合格通知が来て研究を始めることになります。1年目に知り合った留学生の友達はすでに帰国しており、私だけが残っていました。神道とイスラム教の講義もありましたが、英語での講義でしたので、こちらは問題なかったのですが。しかし、その他の日本語での講義では分からない単語などが多く、ついていくのに精一杯でした。最終的に当時付き合っていた、こうすけの力も借りながら、日本語で修士論文を書き終えることができました。
――留学のあと、ジョージアで日本の車の輸入などに携わった後に、京都産業21でも勤務されました。日本で仕事を探す上で大変だと思ったことはありますか?
稲場マリアムさん:
留学生活中は、アルバイトとして英語教師をしていました。大学院を修了したあと、京都の高台寺でのガイドとして仕事をしました。当時は外国人として京都で仕事を探すのは難しかったです。こうすけの知り合いを通して、高台寺での仕事を見つけ、半年ほど仕事をしていました。外国人として仕事をする中で、つらい思いをすることもありましたが、良い経験を得ることができました。
その後、大阪のスローズデリシャスというジョージア料理レストランにて仕事をしていました。こちらも東京で知り合った方とのご縁で仕事を始めることになりました。1年半ほど、ジョージア料理を作っていました。素晴らしい経験でした。将来的にはジョージア料理レストランを自分で開きたいとも考えています。
その後、3年間ほど京都産業センターで仕事をしていました。こちらも留学生時代に知り合った方に教えて頂いたおかげ仕事があることを知り、面接を受けて、無事仕事を得ることができました。
様々な方から仕事を紹介して頂きましたが、このような繋がりは京都を含めて日本で外国人が仕事を探す上でとても大切だと思います。
――日本で仕事をしたいと考えているジョージア人に何かアドバイスはありますか?
稲場マリアムさん:
日本で仕事をしたいというモチベーションが一番大切だと思います。日本を含め、外国で仕事を見つけるのは難しいことです。ですので、自分が何をしたいか、何ができるかをしっかりと見定めて、できることをすることが大切です。私の場合は、チャンスがあれば、まずはやってみるという気持ちを持ち、様々な仕事を経験して、自分の得意なことや好きなことを探していきました。
ですので、イタリア料理屋やラーメン屋でも仕事をしたことがあります。また、人と人との繋がりも重要です。様々なところで仕事をすると、そこで新しい繋がりができ、仕事を見つけることができると思います。
また日本とジョージアでのビジネス文化が違うことを理解することも大切です。日本ほど、ジョージアではまだメールは使われていないように思います。アプリのWhatsupなどを通して、直接電話で仕事の話をすることが多いですが、メールと違い文字として記録が残りません。一方でジョージアでは物事がすぐに進むという点では良いことだと思います。
私は日本で仕事をするとき、常に学ぼうという姿勢を重視してきました。分からない場合はしっかりと質問をして成長を心がけていました。こういった姿勢も海外で仕事を見つける上ではとても大切だと思います。
――マリアムさんは今まで京都でジョージアの魅力を広められてきました。今後も京都でどのような活動を考えられていますか?
稲場マリアムさん:
ジョージア料理レストランで仕事をしていたとき、大変な時期でもありましたが、それでも一番心がワクワクしていた時でした。食器や内装のデコレーションなども自分で決め、メニューも何度も何度も変えました。自分が作った料理を美味しかったと言われたときは本当に嬉しい瞬間でした。ですので、またいつか自分のレストランを開きたいと思っています。
また、ジョージアからハンドメイドのものを持って帰ってきて、日本で売るということも考えています。今度ジョージアに帰国するときに試しでいくつか日本に持って帰ってきて販売できるかどうか試したいです。
東京を中心にレジャバ駐日本ジョージア大使はジョージアのPRを懸命にされています。彼から、関西のジョージア大使はあなただとジョークとして言われました。2023年に娘モアナも授かりました。これからも京都を中心にジョージアのPRをしていきたいと思っています。